ガラスのハート

 彼の妻なら、どんなに贅沢な暮らしができるのだろう。

 子供ふたりを幼稚園からお受験させられるほどの経済力。

 こんなに近くにいるのに、届かない妻の座に、麻里子は胸が切なかった。

 バーで見せてもらった、菜々美さんの顔の写真。

 正直、美形な真一とは不釣り合いだと思えるほど、平凡以下のルックスだった。

 菜々美さんの顔を思い出すたびに、麻里子は思う。

『出会うのが、さきか、あとか。』

 勝ちか、負けか。
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