ガラスのハート

「歩道から飛び出してきたわけでもなく、いきなり轢いたんだ。

 つまりあの男は、道のど真ん中に最初からいたとしか思えない。

 飛び出してきた所を、僕が見逃すなんて有り得ない。

 多分、酔っ払ってあそこに倒れて、寝てたとかじゃないのか。むしろこっちが迷惑だ!」

 真一は苛立ちを隠せない口調で、ハンドルを左手でドンと叩いた。

 焦げ茶の革のカバーが掛けてあるハンドルなので、あまり音は鳴らなかったが。
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