ガラスのハート

 真一は、麻里子のマンション前の歩道に寄せて、停車させた。

 いつもの麻里子なら、ここで軽くキスを交わしてから、別れを惜しみつつ、すみやかに車を降りていくのだが、今日は違った。


「麻里子、着いたよ」

 いつまでも車を降りようとしない。麻里子の顔は真っ青だった。

「ねぇ、真一さん。今からでも救急車だけでも・・・なんなら通報は匿名にするわ」
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