203号室で暮らそう
「父さん」

「今、フランスから戻った。どうだ? 店の方は?」

「上々」

「そうか。じゃあ、私も店に顔を出してくるとしよう」
 
手にしていた、手品ハットのような帽子をテーブルの上に置き、陽景くんのお父様は私に微笑みを見せると、そのままドアから出て行こうとした。

「父さん。俺、家を出ようと思うんだ」
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