パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを

思いがけないセリフに驚いて、部長を見上げた。


「同じ家に住んでいたんじゃ、毎日辛いんじゃないか?」


真剣な目で私の目を見つめる。

部長と……一緒に?
それもいいのかもしれない。
でも、そこまで部長に甘えるわけにもいかない。


「大丈夫です。部長の気持ちはすごく嬉しいです。でも、きちんと向き合わないといけない気がするんです」


いつまでも違う展開を期待するのは、もうやめよう。
あっくんは、紗枝さんと結婚する。
あっくんと私が結ばれることは、絶対にない。

その事実をあの家で受け入れないと、本当の意味で前に進むことが出来ないから。
気持ちの整理は、逃げていたんじゃ始まらない。


「そっか……残念だな。実を言うと、俺がただ不安なだけなんだけどね。二葉をお兄さんの元に置いておくことがっていうか……」

「部長……」


こんなにも優しく私を見つめてくれる人がいる。

部長だって、きっとまだ気持ちを引きずっているはずなのに、こうして私を受け止めようとしてくれているのだ。

それだけで心強かった。
すごく嬉しかった。

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