パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを
足が震えて、指先も震え出す。
部長には知られたくなかった。
ただ、部長にだけは知られたくなかった。
「そんなに怖がらなくても大丈夫だよ」
震える肩先を部長が包み込む。
「ごめんな。でも、どうしても確かめておきたかったから」
「……気持ち悪いですよね?」
「そんなことはない。人を好きになる心に、気持ち悪いも何もないんだから」
私を怯えさせないようするためか、いつもよりさらに優しい声だった。
『気持ち悪い』と言われることを覚悟していただけに、部長の言葉は嬉しかった。
「本当の兄妹ではないんです。父と母の連れ子同士で……」
「それならなおさら、仕方ないことだ」
「それでも、兄と妹には違いないですから」
恋人にはなれない。
結婚もできない。
そんな相手は、やっぱり好きになってはいけないから。
「俺と一緒に住む?」