恋風吹く春、朔月に眠る君
「その前に謝らなきゃ.......」
「ははは、よく分かってるね」
昨日、小学生組がわいわいと騒いで遊んでた時、宣言通り司にも話を聞いてもらった。やっぱり、司にも自分の気持ちは伝えた方がいいと言われた。司は本当に優しい。がんばれと言ってくれた。だから、ちゃんと頑張って仲直りしたい。
「緊張で胃が痛くなってきた」
「大丈夫。まずそうだったら助け船出してあげるから」
心強い言葉にありがとうと言いかけて止めた。いやいや、まずそうってなに? まずそうって仲直り出来なさそうってこと? だとしたらますます胃が痛い。
「そんな暗い顔しなくても」
「だって......」
「双葉が考えてることは杞憂だよ。大丈夫。ゆっくり朔良くんが来るのを待とう」
その根拠は一体どこから来るのか。不安に思いつつも、杏子と話しながら朔良を待った。でも、朔良は先生が来る時間になっても来なかった。出欠を取る際に、先生が体調不良で休みだと言っていた。
「大丈夫?」
朝のHRが終わってすぐに杏子が声を掛けてくれた。
「ねえ、どうしよう? そんなに怒らせちゃったかなあ? 顔も見たくないってこと? 謝る前からもう心折れそう」
よっぽど悲壮な顔を浮かべていたんだと思う。杏子は少しだけ驚いた顔をした。
「まさか、そんなにストレートに不安を口にするとはね」
その言葉にハッとする。こんなに私ってすぐに弱音吐けたんだ。
「いやまあ、双葉はそれくらいの方がいいよ。休みの理由は、顔を合わせたくないからじゃないと思うよ。朔良くんは同じクラスだってこと知らないんだし」
「で、でも、学校ですれ違うのも嫌だとか......!」
「気まずいだろうとは思うけどそれはないでしょ。朔良くんの性格的にそれはない」
「ううーっ......そんなの分かんないじゃん.......」
本当に朔良は私に会いたくなくて、視界から抹消しようとしてるのかもしれない。嗚呼、本当にどうしよう。項垂れると机の角に頭をぶつけてしまった。地味に痛い。それを見てか、杏子はくすくすと笑っている。