恋風吹く春、朔月に眠る君
「双葉って思ったよりネガティブなんだね」
「そうだよ。ネガティブだよ。いつも悪いことばっかり考えるよ」
「拗ねないでよ。素直に言ってくれて嬉しいんだよ」
よしよしと頭を撫でてくれる杏子はお母さんみたい。流石お姉ちゃんだなあ。頼りになる。
朔良って朝弱いからいつも来るの遅いし貧弱だけど全然学校休んだりしないんだ。そんな人が珍しく休みで、それも始業式の日って絶対その原因は私だ。
でも、いつもなら一人で悩んで落ち込んで悲しくなるのに、今日は杏子のお陰で私は考えすぎないでいられるのかもしれない。貯め込まないで吐き出せる場所があるって、こんなに楽なんだね。
「心配なら帰ったら家に行ってみたら?」
「そんなの無理だよ」
「今日は私ついて行ってあげられないし、無理ならいいけど。双葉は考えすぎる前に確かめに行った方がいいと思うけどなあ」
首を縦には振れなかった。杏子の言ってることは間違いない。このまま一人でいたらぐだぐだと考えてしまう。今日の授業は午前中で終わるけど、午後からはずっと部活だ。
その間も部活そっちのけでで考え込む自分を容易に想像できてしまってため息が出た。だけど、会いに行って出てくれなかったらどうしようとかイラナイことばかり考えて、やっぱりわたしは意気地がない。
「まあ、無理はしなくていいよ。あっちも大概だし」
あっちってどっちだ。首を傾げると、丁度チャイムが鳴った。それと同時に先生も入ってきて、杏子は『じゃあね』と言って、自分の机に戻っていった。
授業が終わって早々に杏子は帰った。今日は棗君たちのお昼ご飯を作ってあげないといけないらしい。本当に杏子はいつも大変だ。私はいつも通り彩香や未希たち部活仲間とお昼ご飯を食べて、部活までの時間を潰す。でも、今日は用があるからと言ってその輪から抜けて中庭へと向かった。