わたしの意地悪な弟
わたしにキスをした弟
 花火大会の日、わたしは浴衣を一度手にしたが、少し迷った挙句、ピンクの花柄のワンピースを引っ張り出した。それに白い薄手のカーディガンを着る。

 リビングに行くと、既に紫のアジサイがプリントされた浴衣を身にまとった日和と本を読んでいる樹の姿がある。長身で美人の彼女には良く似合う。

 今では日和とわたしのどっちが年上なのかよくわからない。

 童顔のわたしは日和の妹扱いされたことは数えきれないほどある。

 わたしも日和みたいに美人だったら、樹にブスと言われなかったんだろうか。

「いつくらいに出る?」

 日和はソファから立ち上がると、そう問いかけたわたしの腕をつかんだ。

「お姉ちゃん、浴衣は?」

「部屋にあるよ」

「わたしが着せてあげるから、浴衣着ようよ」

「本当に着るの? 歩きにくいじゃない。靴擦れしたら痛いし」

「大丈夫、樹がおんぶしてでも連れて帰ってくれるよ」

「お前」
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