わたしの意地悪な弟
「聞いていたんだ」
「ごめん。つい気になって聞いちゃった。だから、邪魔しないように先に帰るよ」
「邪魔って」
樹は呆れたような顔でわたしをみる。だが、彼は口元を歪めた。
「美人だし、頭も良いし、誰かさんみたいに意味不明な行動はとらないから、断る理由なんてないよな」
「なら付き合えば?」
「お前がどうしても付き合わないでほしいなら、断ってもいいよ」
「別にいいんじゃない? 彼女くらい。樹もシスコンを卒業して、彼女くらい作ったほうがいいよ」
ショックを受けながらも彼を突き放した。
わたしが断ってほしいといえば、彼はきっとみじめなわたしを笑うだろうと思ったのだ。
そして、姉弟であるわたしと彼の結末はこれでよかったのだと痛む心に言い聞かせた。
好きになってもどうしょうもない相手なのだ。
さすがに二股、三股でもかけようなら姉として注意すべきだと思ったが、好きな相手と付き合うことを拒む権利もない。
彼への気持ちが蘇り、溢れそうになるが、受け入れるべきことだと考えたのだ。