わたしの意地悪な弟
「だったらどうして」

「たいしたことじゃないよ。わたしのことなんて気にしなくていいよ」

 心無い気持ちがスラスラと言葉として外に飛び出してきた。

 本当は気にしてほしいと心の中で叫んでいたのにも関わらず。

「俺、今は姉さんには好きな相手と幸せになってほしいと思っている。だから、泣いていたら気になるし、何かあったら相談に乗るよ。半田先輩に嫌なことを言われたなら、俺が代わりに文句を言うから。姉さんは人がいいから、言えないだろうし」

 樹はわたしの肩に触れる。だが、泣き止まないわたしを放っておけなかったのか、そっと抱き寄せた。

 きっとそれはわたしが病み上がりの樹を抱きしめたのと同じだ。

 そんなことにドキドキしながらも、胸が締め付けられる。

 なんでこんなに苦しいのだろう。

「半田君は本当に関係ないよ。告白をされたのは本当だけど、すぐに断ったの。好きな人がいる、と」

 少の沈黙の後、淡々とした声が耳をかすめた。

「それって俺の知っている相手? 俺にできることなら協力するよ」
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