キミはまぼろしの婚約者
どうやら私達がイチャついているように見えるらしい。

私達がこういうスキンシップをしていても、クラスの皆はもう何とも思わないみたいだけど、他クラスの子から見れば誤解を招くか……。

でも、昔からの延長なのだから、今さら意識する方が私にとっては難しい。


顔見知り程度の子から嫌味を言われてもあまりダメージはないけど、それでも自然と顔は俯いてしまう。

左隣では、ありさがギロッと彼女達を睨みつけていた。


「何で小夜ばっかり標的にするかね。恭哉と一緒にいる頻度はあたしも変わらないと思うんだけど」

「それはやっぱ、ありさが女に見えないからじゃ」

「口をつつしめドアホ」


私の後ろでありさの華麗なキックがキョウにヒットしたらしく、彼は無言で痛がっている。

おかしくて笑いながら彼女達の横を通りすぎると、わざとらしく少し大きめになった声が耳に入ってくる。


「でも、本人は保育園が一緒だったとか言ったみたいだけど、逢坂くん全然覚えてないんだって」

「えぇ~! 存在忘れられてるとか超イタイじゃん。かわいそー」


……何を言われても気にしない。

けど、今の言葉だけは深く胸に突き刺さった。

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