バウンス・ベイビー!


 微妙な状態なのだ。リーダーはリーダーで、忘年会の翌日にはケロッとしていつものリーダーだった。『俺藤のことが好きなのかも』なんて言っていたはずだけど、そんな態度は欠片もみせず、いつもの通り横暴で口が悪くて残念なメガネの隠れ美形だった。

 それから平野も。ヤツも普段と態度は違わず、挨拶はしてくるけれども特別積極的に私にちょっかいをかけてくるわけでもない。いたって平然と仕事をしていて、その二人に挟まれる格好の私は一人でえらく挙動不審なのだ。

 もう力が入りまくっていつもよりせせりの仕込みに時間がかかってしまう。

 串を何本も指で折ってしまって、リーダーの罵声を浴びる羽目にもなったし。こら藤!貴重な資材を無駄にすんじゃねえ!ってすぐ隣で怒鳴られて、耳が壊れるかと思ったほどだった。

 好意を持ってくれているのかもしれない男性と、気持ちは皆目見等がつかないけれども何かと接触してくる男。

 恋愛経験の少ない私、こんな時はどうしたらいいのかが全然わかりません~!!

 泣きたいけれど愚痴を聞いてくれる相手もいず、小説の更新も出来ないままで(ハッピーすぎるカップルの話を書けるテンションではない)、どんどん一人で打ちひしがれていた。

 季節は進んで、もう既に年末が近いのだ。

 今年もクリスマスは当たり前のように仕事が入っているし、それを言えばうちの作業場は全員出勤だから皆条件は一緒のはず。今までは気にしたことがなかったそんなことも、えらく気にしてしまうのは言うだけ言ってあとの反応がない男二人のせいなのだった。


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