ドラマ好きの何が悪い
「シュンキもお前のこと心配してたからさ。」

カイトは私の様子を伺うようにチラッとこちらを見る。

「シュンキさんから昨晩電話もらったよ。色々心配かけちゃって申し訳ないわ。」

コピー機から原紙を取り出して、新しい原紙を入れ直す。

コピーされた紙を少しずつ取って脇机に置いていった。

一気に取るのはさすがに腰に響く。

「でさ、聞こうと思ってたんだけどさ。」

カイトは私が取ろうとしたコピーの束を横からさっと取って脇机に置いた。

「ありがとう。で、何?」

「お前達って結局付き合うことになったの?」

脇机に置いた束を丁寧に揃えながらカイトは聞いてきた。

「一応、そういうことにはなってるけど。」

「付き合おうって、シュンキが言った?」

「そうだね。どちらからともなくって感じだったけど、シュンキさんからかな。」

「そっか。」

私はコピー50枚と設定して、再びスタートボタンを押した。

「で、お前はやっぱ、結婚は、考えてる?」

「全く考えてないとは言わないけど、まだそこまで明確な答えは自分の中には出てないかな。」

こんな話してるけど、よく考えたらここは職場ど真ん中なわけで。

気忙しく行き交う社員達を見ながら、何話してんだ。カイト。

急に、周囲が気になって辺りを見回すと一人と目が合った。

うわ。三輪カナト!仕事に集中しろっての。

目が合うと、カナトはニヤッと笑って、パソコンに視線を落とした。

また同期達にメールでも打っるんだわ。

ほんと、最悪。

「んじゃ、とりあえず、今日はミナミは無理ってことで。」

カイトは、私の肩にポンと手を置くと、「じゃ。またな。」と言って自分の職場の方へ戻って行った。

< 133 / 222 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop