ドラマ好きの何が悪い
「久しぶり~!元気だったぁ?」

カズエは私を見つけるなり飛びついてきた。

「もー、いい年してはしゃぎすぎだってぇ。」

私は、カズエの背中をポンポンと叩きながら笑った。

昔はやせっぽっちだったのに、子育てしてたら随分たくましくなった腕と体。

いいお母さんしてるんだろうな。

「家族皆元気?今日は大丈夫だったの?」

「大丈夫大丈夫。旦那は子供達連れて映画行くって言ってた。」

「そうかー。きっと旦那さんにとってはつまんない映画なんだろうねぇ。気の毒に。」

「いいのいいのー。私もキッズ映画以外の映画なんて何年ぶりかしら?ほんと、昨日からウキウキして寝れなかったんだからー。」

「ちょっと、寝不足で映画の最中寝ちゃわないでよー。」

私たちはガハガハ大きな声で笑いながら、映画館に向かった。

朝一の映画は、やっぱり空いてる。

人混みはそんな好きじゃないから、ホッとした。

映画が始まる。

私の好きな俳優さんが大写しで私に迫ってくる。

あー、サイコー。

胸がドキドキ最高潮!

え?キスするの??まじでー?

完全に映画に引き込まれていたら、私のすぐ横で「スースー」聞こえてきた。

ちらっと、カズエを見ると、なんとまぁ気持ちよさそうに船を漕いでいた。

やっぱりね。

言わんこっちゃない。

私の予言通りになっちゃってるよ。

せっかく久しぶりの映画で張り切って、張り切りすぎて寝ちゃう。

これが、子育て主婦なんだろうね。

ゆっくり寝る間もきっとないんだ。

映画よりも気持ち良く寝れる方がいいかもね。

すやすや気持ちよさそうに寝ているカズエを起こさず、また私はスクリーンに顔を向けた。
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