社内恋愛症候群~小悪魔な後輩君に翻弄されて~
第二章


第二章

あの後。私はどうやってマンションの自室に帰ったのかさえも思いだせなかった。

気が付けばソファに座って、日が落ちて薄暗くなった部屋でぼんやりしていた。

『……もっと、可愛い蓮井さんが見たいです』

急に若林くんの言葉が脳内でリフレインされて、カッと体頬が熱くなった。

ブンブンと頭を振って、脳内の映像をかき消す。

「いったい、私どうしちゃったんだろう」

完全に、彼の言葉に動揺していた。

うっかり、彼に自分の本性を見られたせいでパニックになってしまっているに違いない。

社内でも社外でも……どうして彼の前だと、冷静な自分を装うことができないんだろう。

その日私は、自分の失態がいつまでも心の中から消えてくれずに、ベッドに入った後もなかなか眠れずにいた。

彼の近くは危険だ……今まで、自分の弱い部分を隠すことでうまく仕事をやってきた。それを今さら崩すつもりはない。

これからは、もっと気を付けないと。もう彼に『可愛い』なんて言わせないように。
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