社内恋愛症候群~小悪魔な後輩君に翻弄されて~
十月に入って、日中もずいぶん過ごしやすくなってきた。

あれから、私は自分で決めた通り、より『蓮井貴和子』であるための努力をしていた。

ミスをしないように、些細なことで動揺しないように、いつも余裕で、決して後輩に『可愛い』なんて言われないように。

そんな中、仲のいい滝本さんと、河原さんと三人で久しぶりのランチへと繰り出していた。目指すはいつもの定食屋さん。

もともと、去年私が営業部にいたときから予定を合わせて月に二・三回ランチに出る仲だ。

終業後の女子会も楽しいが、こうやってランチを外に出で食べることで気晴らしになり午後からの業務にも集中できる。

定食屋に向かう間もおしゃべりに余念がない。

河原さんは入社三年目なのに、フレッシュさを失わずにいた。

本人曰く一度も染めたことのない黒髪はツヤツヤで、誰に対しても柔らかい態度は殺伐とした営業部での癒しになっている。

仕事も責任感があって真面目にこなしている彼女は、きっと小さなころから素直でかわいかったに違いない。

おっとりしている河原さんに比べて、滝本さんは天真爛漫という言葉がぴったりだと思う。

負けん気の強さは営業向きだ。けれど我が強いわけじゃない。周りをよく見ているし私と違って他人にも感情移入して近い位置で人のことを思いやれる、素敵な人だ。

ぱっつんとした前髪がトレードマークで手いれの行き届いた胸まであるストレートの栗色の髪が彼女のまっすぐな性格をあらしているように思える。
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