社内恋愛症候群~小悪魔な後輩君に翻弄されて~
クルクルとよく変わる表情は、気持ちが現れていて、そんな彼女をうらやましいと私は思っていた。

「二課の若林君、最近成約件数すごいですね」

ドキンと胸が音を立てた。最近意識して避けていたせいかもしれないが思わずアンテナが反応してしまう。

河原さんの言葉に滝本さんが答えた。

「あ、うん。本人は『金額は小さいですけど』って言ってるけど、新規の顧客とってくるって結構難しいことだから本当にすごいと思う」

たしかに、そうだ。私だって去年まで営業としてやってきていたのだから、新規顧客の獲得がどれほど大変なのか十分わかっている。

「同じ課の先輩の滝本さんが言うなら、本当にすごいんだね」

私は、話を合わせるように言葉を続けた。

出来るとは聞いていたし、営業成績も知っていた。しかし、こんな風に話題になるほどということは、相当頑張っているということだ。

頬が緩んで思わず口角が上がってしまう。別に自分が褒められたわけでもないのに。

「……さん、貴和子さん? どうかしましたか?」

急に黙ってしまった私を、滝本さんと河原さんが不思議そうに見ていた。

「ん、なんでもないよ。それよりお腹空いたね」
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