鬼常務の獲物は私!?



「なにをしている。早く入れ」と、奥の方から神永常務の命令が聞こえた。

高山さんは無言で私を中へと入れてくれて、「失礼します」と私は入口近くで頭を下げる。

神永常務は黒い革張りの椅子に座り、机に向かってノートパソコンのキーボードに指を走らせていた。

その視線が画面から私に向けられると……常務の目が見開かれ、高山さんと同じように驚きの表情に変化した。


「日菜子、なにがあった⁉︎」

「え……?」


問われている意味が分からない。なにをそんなに驚いているのだろうと、私は目を瞬かせた。

すると隣に立つ高山さんが「こちらへどうぞ」と、私を姿見の前に連れて行く。

ドア横の壁に備え付けられている鏡に全身を映して、思わず私は「あっ」と声を上げた。

ひどい有様になっているんだけど……。


なぜか持ってきてしまった紙袋は大きく裂け、事務員の制服のベストは前ボタンがふたつ取れてなくなっている。

出勤前に綺麗に結い上げてきた髪は大きく崩れ、さらにはストッキングも破れて、両膝と額にうっすらと血がにじんでいた。


< 103 / 372 >

この作品をシェア

pagetop