鬼常務の獲物は私!?



神永常務は立ち上がり、腕を引っ張って私も立ち上がらせてくれた。

それから周囲を見回し、誰かを探している。


「ロビー活動は終わったが……高山がいないな。
あいつ、どこに消えたんだ?」


「あ、高山さんならさっき……」


まだ心拍数は落ち着いてくれないけれど、驚きからはやっと回復できて、高山さんの行き先を伝えた。

どこの病院か忘れてしまったが、うちのお得意様の院長先生を見つけたから、挨拶してくると言い、地下駐車場へと繋がるエスカレーターを下りて行ったということを。


「そうか」と頷いてから、神永常務はニヤリと笑った。


「日菜子、ふたりでエスケープだ」

「え? で、でも……」


腕時計を見ると、時刻は15時になったところ。

終業時刻にはまだ遠く、帰社して仕事をしないといけないはず。

それに、ふたりでということは……高山さんを置いて行くという意味だろうか?

つい、下りのエスカレーターの方に視線を向けてしまったら、私がなにを心配しているかが常務に伝わったみたい。


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