やさしい先輩の、意地悪な言葉
すると、「ファイルはここです」と、私がファイルに伸ばした左手と、「あ、これ?」と、神崎さんがファイルに伸ばした右手が、ファイルの前で重なった。


「あっ、ごめんなさい……っ」

「あ、いや俺の方こそ」

お互いに手を引っこめて、なんだか妙な沈黙が流れる。
手がぶつかっただけなのに。これじゃ本当に中学生みたいだ。

……でも、神崎さんも同じように意識してくれてるみたいだった。
さっき二山さんが言ってた通り、神崎さんは本当に私のこと……? なんて、期待してしまう……。



神崎さんが、ファイルに書類を綴るのをぼう……っと見つめる。
長い指が、すごくキレイだな。

指先を見つめていた視線を、神崎さんの横顔にそっと向けると、思わず彼の唇に目がいってしまった。

…….この間、たくさんキスしたんだよね。何度も、何度も……。
少しだけど舌が……入ってきたりもした。


「…….瀬川さん?」

急に視線を向けられて、胸がドキンと反応する。


「は、はい」

「どうかした?」

「い、いえ」

神崎さんとキスした時のことを思い出してました……なんて言えない。



でも。




『遥香ちゃんから仕掛けてあげてよ』


二山さんの言葉を思い出す。

意外に恋愛経験の少ないらしい神崎さん。もし私からアタックしたりしたら……喜んでくれるんだろうか?

それはわからない。でも……


…….二山さんはウソをつくような人じゃない。いろいろ気にかけてくれるいい人だ。
その二山さんが、神崎さんが私のことを気にしてるみたいだと言った。
なら、神崎さんは本当に私のこと……って信じたい。
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