やさしい先輩の、意地悪な言葉
だから、今度は私から。



「……今度っ、また私とデート、していただけませんか……っ?」


言えた。
すごくすごく恥ずかしいけど、言えた!


きっと「いいよ」って言ってくれるんじゃないかなって、勝手に期待しながら神崎さんからの返事を待った。



……すると。



「……ああ……うん。行こうか?」



……あれ?

行こうか、とは言ってくれたけど……なんか、思ってた感じと違う……。

全然笑顔じゃない、というか、困ったような表情でそう答えた。
なんで、困らせてしまったんだろう。

……って、そんな理由はひとつしかない。……私のことを好きじゃないから。



「じゃ、じゃあ時間とか待ち合わせ場所とか、またLINEします」

私が言うと、神崎さんは「わかった」と答えて書庫室を出ていった。




神崎さんはやさしい人だから、きっと思わせぶりな態度をとらず、感情を表情に出してくれたんだと思う。


私の仕事が忙しい時に心配してくれるのは、神崎さんがやさしいから。
私の字や前髪を気にしてくれたのは、ほんの気まぐれ。


マルチーズも、べつに私とは関係ない。


そりゃそうだよね。私は土曜日に神崎さんといっしょに過ごす中で神崎さんのことを気になり始めたけど……神崎さんがあの土曜日に私のことを気にしたりする要素はひとつもなかった。私、ほとんどおどおどして神崎さんに気を遣わせてたから……。
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