やさしい先輩の、意地悪な言葉
「今の電話、彼氏?」

コーヒーを渡し、給湯室を出て行こうとすると、背中越しに神崎さんにそう尋ねられた。

私が振り返ると、
「あ、ごめん。こういう質問はセクハラになっちゃうのかな?」
なんて言われた。


「セ、セクハラだなんてとんでもないです。
ただ、その……彼氏ではないというか……」

あぁ。うまく話せない。もともと、人と話すのはニガテだ。
女性との会話はまだなんとか……って感じだけど、男性との会話はほんとにニガテで。
普通に話せるのは家族と……隆也だけだ。

……しかも神崎さんってなんだかいつもキラキラして見えるから、神崎さんと話すのはほかの男性と話すよりも一層緊張してしまう。



「そうなんだ。ご飯作りに行く……みたいな言葉が聞こえてきたから。あ、ごめんね、立ち聞きして。なるべく聞いてないつもりだけど」

「い、いえ! そんなのはべつにいいんです! あの、その」

神崎さんとこんなに長く話すのは初めてだ。どうしよう、ほんとにうまく話せない。


頭の中がこんがらがってしまい、つい私は。


「か、彼氏ではなくてですね! 結構前に『飽きたから』ってフラれたんですけど、でも、たまにこうして呼び出してもらって、ご飯作って、泊まって、朝になったら帰らされるんですけどっ!」

……と、わざわざ言う必要のない情報を、ありのまま神崎さんに話してしまった。
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