やさしい先輩の、意地悪な言葉
「え、なに、どういうこと?」

「あ、あの、いえ、あのっ!」

ああーバカ私! なんでこんなこと言っちゃったんだ! 家族にも同期にも話していないことを、よりによって神崎さんに!


……誰にも話してなかったのは、自分がただの都合のいい女だ、っていう自覚だけはしっかり持ってたから、なんだけど……。



……神崎さんも、絶対に「バカな女」って思っただろうな……。




言葉に詰まってしまった私に、神崎さんは。



「……そうか」

「……」

「……




それだけ好きなんだね、その彼のことが」




……え……?




「……あの……えと、はい」

「でも、自分のことは大事にしてね」

「は、はいっ。あの、では、お先に失礼しますっ」

私はぺこりと頭を下げ、給湯室を後にし、更衣室へと向かう。



……バカにされたり、思いきり否定されてもおかしくないことだったのに。

神崎さんは、やさしい言葉をくれた。


やさしい先輩の、やさしい言葉。


やっぱり神崎さんって、やさしくて素敵な先輩だなぁ……。



「……あっ、早く行かなきゃ!」

……隆也との今後のことはいろいろ考えなきゃいけないと思うけど……とりあえずは、私は急いで着替え、まずはスーパーに向かった。



ーー…

「おじゃましますっ」

スーパーで夕ご飯の買い物をして、そのあとで隆也に頼まれたおつかいとかも済ませてから、私は隆也の住むアパートにおじゃました。
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