やさしい先輩の、意地悪な言葉
隆也のことを、誰かに『やさしくて素敵な人だね』って言われたら、首を傾げるかもしれない。
やさしくて素敵な人じゃないとは……思う。
私の気持ちをわかってて、ほかの女の子と使う避妊具を買わせたり、ほかの女の子と食べるケーキを買わせたり。
都合のいい女というか、家政婦というか。
少なくとも、女の子として大事にされていないのは、バカでダメ女の私でもちゃんとわかってる。


それでも隆也のもとから去れないのは。
今は大事にされていなくても、誰かに大事にされる幸せを教えてくれたのも隆也だったから。
いつか戻ってきてくれれば、また私は『幸せな女の子』になれる。
戻ってきてくれる可能性だって、なくはない。隆也には今は彼女がいなくて、飽き性の隆也と唯一、二年も付き合ったこともあるから。
そう、思ってしまうから。



……でも時々、むなしくなったりもする。




……今頃、隆也はあの女の子とケーキを食べてるんだろうな。

……あの子は彼女じゃないとは言っていたけど、ケーキを食べたあとは……きっと……エッチするよね。あの子は隆也のこと好きみたいだったし、あの隆也のことだし。



土曜日に神崎さんと会うことを考えると気分が重くなったから隆也に会いたくなったんだけど、隆也に会ったらもっと気分が重くなってしまった。
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