強気な彼から逃げられません



「悪い、逃げるなら逃げてもいい。 俺も女に追いかけれて面倒な思いをしたことは何度もある。
だから、もし俺の気持ちが面倒なら、今日は家まで送っていくけど、それでもう二度と関わらない」

「二度と……」

「ああ。俺の、お前を好きだっていう気持ちを押し付けて、煩わしい思いをさせてまでつきまとうような事はしない。
お互いに受け入れる気持ちがなけりゃ、単なるストーカーだからな」

投げやりにも聞こえる口調だけど、私を安心させるような声音に、私の感情は大きく揺れた。

さっき、初めて会ったばかりの人に無理矢理タクシーに押し込まれて、無理矢理家まで送ると言われ。

そして、突然私を気に入ってると告げられて、そんな非日常の状況が信じられない。

目の前の男、それもどう見ても女の子の目を引きそうな人が私を気に入ってくれて追いかけてくれるなんて。

「私、正直、どう答えればいいのかよくわからない。 恋愛だって、それほど数をこなしてきたわけじゃないし、それに、好きになるとその人だけになるから長くて。
でも、だから重いって言われて振られるし」

今まで恋人がいなかったわけじゃない。

学生時代から数えると、と言っても世間一般の平均値よりは少ないながらもそれなりに恋愛を経験している。

その楽しさも切なさも知っているつもりだけど、私にとって恋愛は苦手の部類に属していて、うまく継続できる自信も、そのコツもよくわからない。


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