強気な彼から逃げられません
「え? 何で?」
同期の何人かで飲みに来るはずだったけれど、結局、残業や急用やらで、私と美絵だけしか都合がつかず二人で来た。
明るい店内の中央付近のテーブルに案内されて、きょろきょろと内装に視線を向けていると、私の視界に入ってきたのは篠田愁さんだった。
数時間前、受付で会ったばかりの怜さんの同僚。
偶然にも隣のテーブルで飲んでいる姿を見て、私は思わず驚きの声をあげた。
愁さんは私に気づいた途端、からかうような声でにやり。
「あ、もしかして、怜が出張でいないからって羽根を伸ばしてる? まあ、普段あれだけ芹花ちゃんの事をかわいがるというか、束縛するというか、重すぎるんだし、たまには気楽に飲みたいよな」
「いえ、そんな事はないんですけど……」
「そんなに慌てなくても、怜には黙っておくから、今日はのびのびとお酒を楽しんだら?」
「だ、だから、違うんですっ」
焦る私の言葉に意味ありげに笑った愁さんは、私が怜さんの気持ちの強さに辟易しているとでも思っているのか、自分の言葉に頷きながら手元のビールを飲み干した。
愁さんの向かいに座っている女性が、そんな愁さんをたしなめるように口を開いた。
「愁、人の恋路をからかうような言葉はやめたほうがいいよ。 怜さんが幸せそうで嬉しいのはわかるけど、彼女も困ってるでしょ」
ため息をついた彼女は、私に向かって申し訳なさそうに頭を下げた。
「愁は、怜さんとはとても仲がいいっていうか、悪友っていうか。 怜さんがようやく大切な人を見つけた事が嬉しくて仕方がないみたいで。結局……子供なの」
苦笑を浮かべた顔を愁さんに向けて肩を竦めた。