優しい闇
3
街に出ればカップルばかりだった。


時刻は午後9時を回ったところ。


イルミネーションがあちこちに施され、皆の笑い声と楽しげな会話で充満している街。


不思議と私は浮いてないのか


周りから異質なものを見る目はなかった。


異質そのものの私なのに。


ショーウィンドウに映る自分を見つめて笑みが漏れる。


「最後ぐらい着飾ってもいいよね?」


場所は決めてあった。


今は廃墟になったビル。


近々取り壊しが決まってるが、壊す前に間に合って良かった。


裏の非常階段のドアが壊れてるのは下調べで知っていた。


そっとドアノブを回し、今は誰もいないビルへと踏み入れた。
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