④オオカミさんのプロポーズ エリート課長の専決事項
第5話 クマさんの迷い

 旅行の日、思いきってクリスマス・イブに赤野燈子を誘いだし、改めて“告白”をした結果……
 何と、メデタクお付き合いできることになったからだ。

『熊野さんだったら…』  
 恥ずかしそうに俯きながら、彼女はオッケーの返事をくれた。

 彼女のことは、3年前に新人として課に入ってきた時からずっと気に入っていた。
 深い意味はない。

 単に、小柄で童顔、ムネがデカイという、ありがちな彼のタイプに、どストライクだったからだ。

 なぜ彼が突然行動に出ることを決めたのか。
 きっかけは、長期出張から帰ってた途端、同期の出世頭、大神のバカの昇進と、結婚の話だった。

彼は、こんなふうに考えた。

__世の中には、“コイツだけには負けたくない” と思えるヤツが必ずいる。
 俺にとっての大神がそれだ。 
 ヤツはどうだか知らないが、トーコちゃんのことでは、抜け駆けしない、させないのフェアな勝負をやってきた。
 
 だが奴は、自らステージを降りた。


 大神が、社長の浮気のダミーだということは知っている。ダミー交際の末のダミー婚なんて、全くヤツもどうにかしているが…
 
 これでもう、ヤツに義理立てする必要はなくなった______
< 28 / 60 >

この作品をシェア

pagetop