④オオカミさんのプロポーズ エリート課長の専決事項
 しかし、そんな彼にも目下2つの悩みがあった。
 まず1つめ。
 製品メンテナンスを担当している彼は、出先への出張がやたら多い。
 そんな事情で、彼が告ったすぐ後も、正月には燈子はずっと帰郷していたし、年明けからも自分の出張が続いたから…
 もう2ヵ月がたった今も、二人で逢えたのはまだ3度しかない。

 もう1つは、その3回の内容。
 一緒に晩飯を食べに行ったのが全てなのだが…
 ちょっといい雰囲気になりそうになると、彼女はおどけながら、そそくさと逃げてしまうのだ。

 まだ手も繋がないお付き合いは、ハッキリいって “職場の同僚” だった今までと全くかわらない。
 
 名誉のため言っておくが、彼は決して奥手ではない。

 こんな彼でも、高校時代はラグビー部のキャプテンをしていて結構モテたし、大学生の頃には、本気で結婚を考えた女性(ヒト)だっていた。

 社会に出てからも、全く誘いがなかったわけではない。
 ただ、『セックスするのは結婚してから』と同僚に公言していた彼には、いつの間にか “時代錯誤” のレッテルが貼られていた。
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