世界から君が消えた



ーーキーンコーンカーンコーン


やっとチャイムが鳴った。



「お腹すいたぁ。」

言ったと同時に腕を伸ばして机に伏せる。


そこである事に気づく。



「あー、そう言えば今日時間がなくて弁当作ってないや。」


購買で買って来ないと、なんて思っていると一人の女の子が。

俺が襟元パタパタしてる時、見てた子の一人だ。


背が低く小柄で、上目遣いに見つめてくる。


同じクラスなのだが、残念ながら接点がなく、名前が分からない。



「よかったら私の食べて。」

1人がそう言うと、何人かが私のも。と迫って来た。



「いや、気持ちだけ受け取っとく。ありがとね。」

笑顔でそう言って席を立つと、優奈に軽く足を蹴られた。


「イッテ、何すんだよ。」

「そう言うのがダメって言ってんの!天然ってのは、もはや罪だな。なんだよ、ニコニコしやがって。」

何か訳の分からない事を言っている。


からかう様な笑顔。

少し、拗ねてもいるようだ。


さっきまであんなに怖がってたくせに、元に戻ってホッとしたってのは秘密。




購買に行っていると、何故か優奈が付いて来ていた。


何かあるのだろうと思い、そっとしておく。



そーいや川村さん、大丈夫かな…。



「あ、そーだ。今日、帰りに優奈の家寄っていい?」

優奈の家は、親がパン屋を営んでいる。


それで、よく弁当にパンを持ってきたりしていた。



「いいよ!蒼汰の大好きなチョコドーナツ、いつ来てもいいように沢山用意してるから。」

優奈の家のチョコドーナツは、大袈裟かもしれないけど、世界一上手いと思う。


「ありがと、ついでに家まで送る。まだ犯人がいるかもしれないって言ってたし。わかんないけど。」

とはいっても、よく送ってるんだけどね。


まぁ、なんかあってからじゃ遅いし、できるだけ一緒にいた方がいいよな。


女子な上に、怖がりだし。



「ありがとー!よっしゃ、今日の昼はチョコドーナツを持って来てるから一つあげよう!」

「おう。」

ルンルンと効果音でも付きそうな感じで、俺の隣を歩いていた。


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