世界から君が消えた
その瞬間、君を守りたいと思う



初めて会った時、君は泣いていた。



それは1年程前、まだ俺が高校2年生で君が1年生だった頃の、ある夏のお話。


あの日は、まだ知らない君の心とは対照的で、とても天気のいい日だった。


熱い陽射しの所為か早く目が覚めた。


いつもより早く家を出ると、その瞬間。



ーードンッ


「あっ…と、ごめん。大丈夫?」

女の人にぶつかった。


俺と同じ制服を着てる。



間一髪で抱きとめ、大丈夫?と聞くが、女の人は何も答えない。

俯いたままだ。


掴んだ腕は華奢で、疲れさえ感じられた。


体制を正し腕を離すと、俯いたまま横を通り過ぎる。



「…っ!待って!」

また、腕を掴んだ。


今のは、見間違いなんかじゃないはず。



ねぇ、なんで…

「泣いてるの?」


足を止めた彼女は、振り向き、やっと顔を上げた。


見た事ない顔だな、俺より年下だろうから、1年生かな?



「あ、さっきぶつかったのが痛かった?」

濡れた頬、腫れた瞼、涙を零す瞳。


なぜかその瞳から、助けを求められてる気がした。


無言で首を振り、暫くしてやっと第一声を発した。


「ちがう……。」

小さくて、震えていた。


まるで独り言かの様に、そっと呟いていた。



ーー“助けて”。


そう聞こえたのは気のせいかな。


< 2 / 13 >

この作品をシェア

pagetop