強引同期と偽装結婚することになりました
「まあ、実際のお母さんの意見や気持ちを聞けたわけだし、焦るな。まだ時間はあるからさ」


「そうだね。焦らず、少しずつだね」


「葵、葵だけじゃ正直、この企画に賛同してくれる人は少ないかもしれない。言いたくないけどそれが現実だ。trabitの名前はここらでは知られているし、ツアーも有名だけど新人にツアーをすぐ任せてくれる営業先は少ない。だから、俺を利用しろ。俺ならある程度、営業で回ってるし、見知った人も多い」


「それって・・・」


「そのための偽装結婚だ。社長の言葉に挑発されたのもあるけれど、俺の妻なら任せてくれる営業先も出てくるかもしれない。だから、お前は俺の妻という立場を大いに利用すればいい」


「優木くん、ありがとう。今度の偽装結婚は、私のためだったんだね。本当に嬉しい。でも、それは最後の切り札にしてもいい?」


「葵らしいな。そう言うと思った。ああ。でも、立ち止まったら俺がいることを忘れんな。それと一つ、葵に頼みたいことがある」


優木くんのお願いを聞いて、彼が本当に私のために偽装結婚を続けてくれるんだと涙が溢れた。この人はここまで私のことを思ってくれている。支えてくれている。


優木くんのためにも、花純さんのためにも、そして誰よりも私のためにこの企画を絶対に成功させたい、そう強く思った。
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