強引同期と偽装結婚することになりました
「・・・さ、先程から言われている優木ですが、わ、私の夫です。そちら様が評価してくださっている夫が私のこの企画を推してくれました。この企画なら間違いないと。だから一度、企画書に目を通してもらえませんか?」


祐の名前を出した途端、高橋さんがピタリと止まる。でも、すぐにあしらうように言葉を続けた。


「だから?お宅が優木さんの奥さんで、優木さんからその企画を推された。だから読め?そんなの関係ないでしょ。うちが欲しいのはtrabitの優木さんという看板で奥さんじゃないんだよ」


「・・・私の、企画を一蹴されるということは、それを推してくれた主人をも否定しているということにもなりませんか?」


ダメだ。こんなことならもっと営業のトークを磨いておくんだった。これじゃ先方に喧嘩を売ってるようなもの。

せっかく祐が貸してくれた名前なのに、それすらも生かせてない。


「はあ?あんた、何言ってんの?帰った、帰った。こっちはあんたみたいな小娘相手にしてる暇ないんだよ」


悔しい、悔しい。目には涙が浮かんで、唇をきつく噛みしめる。これでもかと力強く。

そして、高橋さんが部屋を出て行こうとしたとき、ドアがノックされた。
< 170 / 199 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop