強引同期と偽装結婚することになりました
「優木くん、あのね。どうしてみんな泣いてたのかな?私、何か気に障ること言った?さっきからずっとモヤモヤしていて、今からおばあさんに会いに行くのに、気になって仕方なくて」


優木くんに駆け寄ってそう言うと、彼はピタリと足を止めしまった。優木くん?と声を掛けるも返事がない。


「葵、俺、実は家族コンプレックスだったんだ。多分、俺だけじゃない。なつみも陽菜も、薫もそうだと思う。人数が多いのもそうだけど、大翔っていう弟がいることに」


「どうして?大翔くんはすごく可愛い。それにみんな仲良しでみんながそれぞれを大切にしている家族じゃない。そんな風に思うなんて・・・」


「・・・うちの家さ、結構周囲から好機の目に晒されててさ。なつみも、陽菜も薫も言わないけど傷つけられたことがあるんだと思う。だから、あいつらはさ自分の家庭の話をあまり外ではしない。ましてや大翔のことを話したりもしなければ、存在自体を隠してる。でも、葵はその大翔を好きだと言ってくれた。大翔だけじゃない、なつみも陽菜も薫も母さんも、父さんまで。俺たちの家族を好きだと言ってくれた。それがみんな、すごく嬉しかったんだ。ありがとな」


ゴシッと袖口で潤んでいた目を優木くんが拭う。その姿がたまらなくて、私から優木くんをギュッと抱きしめた。


「優木くんの家族は、とても素敵な家族だよ。だからそれを誇りに思ってもいいんだよ。コンプレックスなんかに思わないで。あんなにお互いを大事に思いあっている家族を笑う人なんて私が許さないから」


私も涙を堪えることが出来なくて、慰めるはずが優木くんの服を濡らしてしまう。

私たちはしばらく、そのまま抱き合ってその場を動かなかった。
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