強引同期と偽装結婚することになりました
優木くんのおばあさんは、今年のお正月から少しずつ、物を忘れていくようになったらしい。

最初は日常の些細な出来事。でも、それから少しずつそれは進行して、今では人のこともわからなくなってしまった。


「祐、みちるから聞いたけどばあちゃんを結婚式に呼ぶつもりなの?あんたの気持ちは嬉しいし、ありがたいけど葵さんのほうに迷惑がかかるかもしれないし、ばあちゃんは何も覚えてないんだよ?」


「覚えてなくてもいいんだ。ワガママだし、自己満足でもいい。俺が、そうしたいんだ」


「私からもお願いします。優木くんの願いを叶えてもらえませんか?」


必死に懇願するも、美津子さんは難色を示したままで首を縦に振ることはしてくれない。


私の家族は大丈夫だと伝えても、優木くんがどれだけ粘っても美津子さんの意見は覆ることはなかった。



「ごめんね、二人の気持ちは嬉しい。だけど、そんな晴れ舞台に何をするかわからないばあちゃんを参加させるわけにはいかない。多分、あんたたちも後悔すると思う。一人、何が行われているのかも理解出来ない人間がそこにいるだけで空気は違う」



「・・・今日は帰る。でも、諦めたわけじゃない。俺は、ばあちゃんと約束したから。俺が結婚するときは必ず先頭で晴れ姿を見せるからって」
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