現実世界で捕まえて
死神と同居中

部屋を綺麗に片付けて掃除を終えると
美味しそうな香りがぷーんと鼻に届く。

男は冷蔵庫の中を見て、ありあわせの食材で美味しいチャーハンを作ってくれた。

小さなテーブルに向かい合い
スプーンですくって口に入れると

「美味しい」
ビックリビックリ。
そんな使えるような材料もないのに、こんなに美味しいチャーハンができるとは感動。

「すっごく美味しい」

「そりゃそうでしょう」
笑顔もなくサラッと言われてしまった。

「いや本当に美味しいよ。オイスターソースの風味がふんわりと届いて塩加減も抑え気味でニンニクも効いていて、とっても美味しい」

「今までどんな悲しい食生活を送ってたんです?」
眉間にシワを寄せて男は私に問う。

人に作ってもらうから、余計に美味しいのかもしれないね
スプーンを置いてしみじみ思う。
仕事を終わらせひとりで家に戻り、洗濯機を回しながらひとりで料理を作って食べる。
料理は嫌いじゃないけれど自分の為に作って食べるのはちょっと寂しい。

あ……人じゃないか。死神に作ってもらったのか。

「希望としてはどうします?顔ですか?お金ですか?それとも名声?」

急に言われて我に返る私。そうだ、それを考えなきゃ。

「死神さんはもうベテランなの?」

「まぁそれなりに」

「今までどんな希望が多かった?」

「そうですねー。やっぱりくだらないけど定番としては、お金と顔と名声でしょうか」

そうか。
そうだよね。
やっぱりソコに落ちつくよね。
< 13 / 103 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop