現実世界で捕まえて

ショッピングモールのカフェで平野課長は頭を下げた。

「ごめん。カッコ悪い。恥ずかしい」

そんな素直な恥ずかしそうな顔もキュンです。
落ち着いた課長のそんなミスもキュンです。

「でも、こんなカッコ悪い姿を見せると、もう無理せず留美ちゃんと付き合える気がする。俺って意外とダメ人間だから」

「そんな事ないです。課長は素敵です」

「その……課長って止めてほしい」

「え?」

「名前で呼んで」

「亮さん」

「はい」

キュンどころかズキュンです。

甘い甘いデートをして
小さなアクアマリンのネックレスを買ってもらって

今日も別れは名残惜しく

でも
マンションの前でキスをする。

唇にキスをする。


別れるのが寂しい。

大好きな大好きな亮さん。


でも

彼に立て替えたその時のお金は


その後ずっと

戻って来なかった。
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