地獄の果てでキミを愛す
ドアノブを掴む直哉の手。


彼がドアを開けるのを阻止したのだ。


まあ、例え開けられたとしても
私が逃げる事は不可能だったみたいだ。


突如やってきた眠気。


最早目すら開けていられないくらいだ。



「安心しろ、ただの睡眠薬だ」

「すい……みんや……く……」



彼の言葉を復唱する事さえ難しい。
眠気に逆らえずゆっくりと瞼が下がっていく。


テーブルから零れ落ちる白い雫が目に留まる。


ああ、ホットミルクに睡眠薬を……。



「桜……ゆっくりと躾けてやるからな。
もう俺から逃げようとも思えないくらいに……」



直哉はそう言ってしゃがみ込むと
倒れこむ私の頬を撫で上げた。


愛おしそうに。


でもその瞳は
私を捕らえているはずなのに
私の姿は目に映っていない。


彼は……。
壊れてしまった。


そう思ったところで
完全に意識は途切れていった。
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