君と秘密のラブレッスン

「おい、聞いてんの?」

「き、聞いてるよ。でも、意味が分からなくて」

戸惑ってそう言った私に、崎本くんははぁ、と息を吐いた。


「だから、俺のほうから交換条件つけるって言ってんの。

お前がその好きなヤツと両想いになるように、俺が手伝ってやる。

……その代わり、絶対に写真のことは言うなよ」


偉そうにそう言った崎本くんに、私はやっぱりすぐには言葉の意味が飲み込めなくて、きょとんとしてしまった。


「え、どうして交換条件なんか必要なの? 私、誰にも言わないって言って」

「おまえのことを信用してないから」


私の言葉を遮った崎本くんの冷たい声。

信用してない、なんてきっぱり言い切られて、なんだかとても悲しくなった。

崎本くんの言葉は、きっと本心。

彼の迷いのない声に、そう思わされる。


交換条件なんかいらないのに。

私は本当に、崎本くんの秘密を言いふらしたりしないのに。

そんな、軽い人間じゃない。人の痛みがわからない人間でもない。

そう言いたくなったけど、どんなに私が言葉を重ねたって、きっと崎本くんは納得してはくれないだろう。

なんとなくそれがわかったから。


「……わかった」


私はひとつ息をついて、頷いたのだった。


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