もっと、キスして



みんなと別れて、


龍青にいつものように送って帰ってもらってるとき。



「まだ、告白の返事すらもらってないのにこんなこと言うのもなんだけどよ。」



「なあに?」



「一人であの家住むの嫌だったら、


俺んち来いよ、いつでも。」



「っ…。」



「お前のことは、お見通しだからな。


何考えてるかだいたい想像つくんだよ。」



またバレてた。


1人であの家に住むのは、本当は少し怖かった。


いつ帰ってくるかわからない恐怖。


寝てるとき、ほんの少しの物音がしただけで飛び起きるし、



夢にもあの人が出てきて、


私はまた夢の中で声も出せずに怯えてる。



捕まってるって知ってるいまでも、


やっぱり長年心の奥底にこびりついた恐怖はそう簡単にはぬぐえない。



寂しさだって、消えない。



警察沙汰になったことで、周りの人の目は同情の目へと変わった。


ここに住みずらくなったのも確かだ。



本当は、昨日の夜、龍青が隣にいてくれて、


久々にぐっすり眠れたの。



「最初、涙なんて絶対流さなかったお前が、


俺らと関わって泣くようになったろ。


何でも力になるから。


助けぐらい、いつでも求めに来い。」




ああ、そうだ。


昨日、人生で久々に泣いた気がする。


久々に人の温かさに触れて。


久々に、涙が出た。


意識してなかったけど、ちのたちのおかげだなあ。



「ありがとう、龍青。」


「おう。」



龍青の後姿を見送りながら、


前に進まなくてはいけないと、強く思った。


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