もっと、キスして

私たちが待ち合わせ場所のコンビニに着いたとき、3人は話しながらアイスを食べていた。

「凛、龍!おそいぞ!」

私たちにいち早く気づいた泰成は私たちに食べ終わったアイスの棒を向けてくる。

「ごめんごめん。
泰成すごく楽しみすぎて1時間前からここで待ってたんだもんね。」

わたしが笑いながらからかうと、泰成も負けじと

「なんだよー!そういう凛こそ楽しみにしてたろー?」

と悪戯な笑みを浮かべて言ってくる。

「当たり前でしょ。みんなとのはじめての遠出で、楽しみじゃないわけがないでしょ?

ね、ちの。」
「うんっ。わたし、楽しみすぎて眠れなかった!」

泰成はその言葉を聞くと
なんだよーと言いながらぶすっとしていた。

「ほんと…狡いよなあ…」

泰成はそのあと、そんなことを呟いたような気がしたけど、
あまりよく聞こえなかった。

「なに、泰成。」
「何でもねえし。」

なんで聞いても答えてくれないのかわからなかった。
前の龍青の家で話していたときもそうだった。

あまり気にしてないけど。
それからしばらくみんなで話しながらちのがアイスを食べ終わるのを待った。

「ごめん、お待たせしました!」

ちのがそう言ったのとほぼ同時に、龍青は立っていた私にヘルメットを被せる。

「行くぞ。
着くのが遅くなる。」
「昼前には着きたいよなー!飛ばそーぜ!!」

龍青は乗れという代わりに、ヘルメットの上から優しく頭を叩く。
みんなそれぞれのバイクに跨り、海に向かってバイクを走らせた。

途中でコンビニに寄って休憩しながら、1時間半ほどかけて海に着く。

「海だー!!!!!」

バイクを降りると、泰成と大貴は一目散に場所取りに走り出した。
ちのは、待ってよ〜って言いながらその2人を追いかける。

私は、しばらくその場から動かなかった。

「凛。行かねえのか。」
「………私…、いままで休みの日にバイト以外で外に出たことなんてなかったの。
夏は、バイトが終わったあと、たった1人のつるみ友達と、クラブ街の裏路地で海行きたいねって話をして。
私は、どんなところなんだろうって想像しながら話をしてたの。
……想像してた海は、すごく、綺麗だった。」

楓と過ごした今までの日々を思い出した。
誰もいない砂浜に、私だけがいて。
だだっ広い海を眺めてる。
そんな、光景。

龍青が見せてくれた海そのものだった。

「でも……この海は……そんなんな想像、比べ物にならないくらい綺麗ね。」

< 158 / 187 >

この作品をシェア

pagetop