もっと、キスして

止まない雨



今までのあの人が私にしてきたことをみんなに打ち明ける気にはならなかった。



かわいそうって同情されるの嫌いだし、今まで人に話したこともなかったし。



犯されて、殴られて。

そんな風に育ってきた汚い私を嫌って欲しくなかった。



みんなに嫌われたらほんとに生きる意味がなくなってしまう。



想像するだけで怖くて。


バレることを考えたら吐き気がした。



元の生活に戻って3週間。



あの1週間については最初の1日以外触れられることは無かった。


1週間見ないあいだに大貴とちのはおしどり夫婦みたいになってるし。



泰成はそれをいじるのに必死そうで。



放課後はバイトをして。



「大ちゃんは夏休み忙しいの?」


「そんなことねえって言ったらうそになるか。

でも遊ぶ暇がないわけじゃねえし安心しろ。」



「やったぁっ。」



「うわでた。カップルラブラブ見せつけアタック。

夏は暇な日彼女とデートすっから邪魔すんじゃねえぞ的なアピールを幼馴染みにさり気なくアピるやつ。」



今日も泰成はちのと大貴をからかうことに必死だ。



「そんなこと思ってねーよ!」


「ちの。そんなあたふたしないで大丈夫だから。

泰成2人のことからかうぐらいしか楽しみがないんだよ。」



泰成のからかいを長年の付き合いの大貴はおふざけとして受け取ってるだろうけど、


ちのは全部全力で受け止めちゃうから罪悪感感じるのか、


いつも泰成と大貴の言い合いを心配そうに見てる。



「ほ、ほんと…?」


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