Polaris
「今日も会議室?」
「はい」
「案内するからついてきて」
得意げに私を手招く青柳さんは、やはりムカつく。だけど、ついていくしかない私はこくりと一度頷き青柳さんの斜め後ろを歩き始めた。
「あの子のこと好きなの?」
「え?」
「他に好きな人いるんだよね? 確か」
「え、あ……はい」
斜め前を歩いている青柳さんの表情は見えづらい。どうしてまた、彼はこんなことを聞いてくるのだろう。
「どんな人?」
「え、えっと……一言でまとめると不思議な人です。会ったことないはずなのに、ずっと前から知っているような……そんな風に感じるくらい私の事をちゃんと見てくれて、それから、私もちゃんと彼自身を見つめていたいと思える人でした」
つい、長々と話し出してしまう私。
こんな私の話を聞いた青柳さんは、一体どんな表情をしていて、何を考えているのだろうか。
そんなことより、何故私は青柳さんにこんな話をしちゃってるんだろう。
「会ったことないんだよね? 会ったことないのにどうしてそんな風に思うのか、僕には分からないな。口だけならどれだけでも偽れるんだよ? もしかしたら本当は、凄く性格の悪いやつかもしれない」
前を歩く青柳さんの声は、いつもよりもっと低いトーンで、少しだけ冷たい。