Polaris



◇ ◇ ◇



「……ごめん。ありがとう」

「ほんっと、いい加減覚えなよ」

「だ、だって!ここが広すぎ………ううん、私が悪かった。ごめん」


株式会社JECの本部、会議室前。

今日も迷っているところを、運が良いのか悪いのか、私は樹(イツキ)に見つかり案内してもらった。

これは、方向音痴な私が悪いのではなくここの会社が悪いのだと主張しようかと思ったが樹が呆れた目で私を見ていたのでやめておいた。


「うん、分かればよろしい。でも、帰りも心配だから送ってあげてもいいけど……どうする?」

「えっ⁉︎ い、いいよ。大丈夫。他の人と帰るし」


青柳さんが樹だと分かってから、私と樹はお互いに恋愛的な意識はせずに接している。

……いや、私は意識しているけれど、していないように見せている。


樹と会いたいならば、こうしているしかない。

樹と話したいならば、樹の瞳の向こう側を探るような言葉は発してはいけない。

なんだか、暗黙のルールのようなものが私達の間に出来てしまっているようだった。

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