Polaris

「仕事はいいの?」

「あー、うん。多分ね」

「何よ、多分って」

「キョンキョンの為におサボり中です」

「えっ⁉︎ サボり⁉︎ もう!馬鹿!ちゃんと仕事しなさいよ!私のことはいいから!」

前を歩く樹の背中を、両手で力強く押した。

「あはは。いいよいいよ。今俺殆ど雑務だし、そんなにいなくても困らない」

「そういう問題じゃないでしょ!もう!」

きっとまだ会議室には三浦くんも宇野さんもいるはず。だから、戻って一緒に帰れば良い。そう思っていると、顔だけをくるりとこちらに向けた樹。


「でも、俺が仕事に戻ったら……キョンキョン、アイツと帰るでしょ?」


私の考えを見透かしていたのか、それともただの直感か、樹の言葉は私の思考を読み取っていたみたいに当ててきた。


「そりゃあ……そう、だけど……」

「それなら、サボってでも俺が送る」

「いや、でも」

「でも、じゃなーい。ほら行こう、キョンキョン」

「えっ、ちょっと……!」


私は、樹の言葉を理解するより先に手を引かれて歩き出した。

そんな私達の姿を通り過ぎる社員さん達はチラチラと物珍しそうな目で見ていた為、私は顔を俯かせて必死に隠していた。

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