Polaris
「常務、私、もう唯川さんとは仕事したくないですぅ。どうにかしてください」
「いやぁ、気持ちは分かるけど……そう言われてもねぇ」
「それじゃあ、常務は私に我慢しろって言うんですかぁ?」
「いやぁ……そうだねぇ。うーん、分かった。考えておくよ」
仕事を私としたくないって……それは、こっちのセリフなんですけど。私だって、貴方としたくて仕事してる訳じゃないんだから。
大体、常務も常務だ。彼女が全然仕事をしない事を知っているくせに、可愛いから、なんて理由だけで切ることもできない。
常務だけじゃなくて、他の男性社員だってそう。彼女が泣きつけば、事実や事情を知っていたって、彼女と一緒に私を悪く言う。
本当に呆れる。彼女にも、周りの人にも。
だけど、人ってみんなそういうものだ。私は、そういう人ばかり見てきた。
この世界に、正義なんて存在しない。自分の意思をもつ人なんて、どこにもない。
多くの意見を持つ方が正しい。大きな力を持つ方が強い。
そんなの、何が正義なんだ。これじゃあ……本当に正しいことなんて分からない。正義って……何のことを言うの。