Polaris
今、電話はできないと送ってしまえば、この先ずっとイツキと電話ができなくなるような気がした。
もう、イツキから電話をしようなんて言ってくれなくなるような気がした。
「はぁ」
電車の扉に額をくっつけ、瞼を閉じる。
心地良く電車に揺られること約数分。最寄駅へと着いた私は電車を降り、家路をひとり歩き始めた。
……ああ、もう。返事どうしよう。
今なら電話できるよ、って返す? それとも、断っちゃう?
あまりに突然すぎて、心が追いつかない。だって、今まで画面上に映し出される文字でしか会話をしてこなかった人と、お互いの声で話すんだもん。そんなにすぐに答えが出るわけがない。
「どうしようどうしよう……」
もちろん、もっと近づきたいと思うことは何度もあった。電話だって、どちらかといえばしたいと思ってる。
だけど……緊張する。今の時点でこんなにも緊張してるのに、実際に声を聞いたら私────
ブーブーブー。
「わあっ……!」
携帯を握りしめ、返事をどうするかを考えながら歩いていた私。突然震え始めた携帯に驚き、画面を見てみると、そこには《イツキからの着信》と表示されていた。