Polaris

《キョンキョン、今、電話してもいい?》

携帯の画面に映し出されたメールの内容。それを見た私の目からは、ピタリと涙が止まった。

そして、ドクン、ドクン、と激しく高鳴り始める胸の鼓動。


嘘。何これ。どうして? 見間違いなんかじゃないよね?

頭の中が、すごく混乱していた。だって、まだイツキの声を聞いたことなんてない。

確かに、メールアドレスを交換した時、電話番号も教えていたけれど……まさか、実際に電話するなんて思ってもみなかった。

緊張のあまり、私は返事を返せず、ただメール画面を見つめていた。


ドクン、ドクン、ドクン────。


胸の鼓動がうるさい。さっきまで落ち着いていたはずなのに、今は、周りの人に聞こえてしまいそうなくらいに高鳴っている。


はぁ、ふぅ、と深呼吸をしてみる。すると、少しだけ落ち着いた様な気がする胸の鼓動。

私は、ゆっくりと親指をボタンの上で動かした。


《ごめん。今、電車だから電話はできない》


カチ、カチ、とボタンを押していく。

今、私がいるのは電車の中だから電話はできない。そう伝えようとメールを作成したけれど、送信ボタンは押せない。

< 25 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop