Polaris
「もしもし……イ、イツキ? あ、えっと……どうしたの?」
『いや、どうしたの? じゃないでしょ! キョンキョンが元気ないからかけたのにさー!しかも、コール何回目だと思ってんの⁉︎ まったくさぁ。まあ、生きててよかった』
「え? い、生きててよかったってどういうこと?」
『すごく悩んでるみたいだったし、でも、電話していい? って送ったら返事来なくなるし……もしかしたら、なんて思って』
「そんな大袈裟な」
電話の向こうから聞こえる安堵の息に、ぎゅっと胸が締め付けられたような気がした。
電話に出なかった私に何かあったんじゃないかと思ったなんて、本当に大袈裟すぎる。だけど、正直なところは嬉しい。
『キョンキョン』
「な……なに?」
ちゃんと、間違いなく、イツキの声で呼ばれた私の名前。私の胸は、また少し大きくドキリとした。
『俺ね、キョンキョンはちゃんと優しい女の子だって知ってるよ』
「な、なに言って……」
『キョンキョンは間違ってないと思うな、俺。キョンキョンの事だからさ、嫌われ役をかって出てるんでしょ? 仕事場で』
この言葉だけで、もう私は泣きだしそうだった。
イツキだけは、分かっていてくれる。分かろうとしてくれる。その事実が、本当に嬉しかった。